百 ( もも )




歳月をたくわえた ” 味 “を感覚する時に

着古してもなお、この衣を愛してやまないという感情が湧きこぼれる。

誰もが同感できるものではないが、ご自身にとっての心の安息、もう一つの皮膚なる存在。

そのように存在する衣に、私の意識を向けなければならないという内外の衝動がてきれきと光り起こった。


まあたらしい衣をつくることではなく、在るものを生かすという選択肢。


地球資源という諸々の課題に対しての真面目な着眼をもちえつつ、単に持続可能という観点だけではなく、生かすという過程においては、心に沁みとおるほどの交歓を体現して、手をつかった やさしみのある着方の表現をふやすこと。


百にんいれば 百のからだと


個々の生活と情緒がある


そのあらゆる ” かけら ” に私の手が燦然としだけて、再び生きることをはじめる衣の提案。


i a i / 居相








– 基準 –

・気に入っているが、今の自分の心に合わない衣

・愛用してくたびれた衣

・歳月を経て規格が合わなくなった衣

・用途を見直したい衣 等々…



– 概要 –

・少人数予約制の今展にご参加いただける方。

・素材は問うておりません。

化学繊維であっても、自然繊維であっても、愛着のあるものに触れたいです。

・着手後、万が一お気に召されない場合は、こちらで買い取らせていただきます。

・相場は一万円前後






言葉だけでは掴みづらいと思われました為、私の一例を挙げさせていただきます。




私の生まれ育った母屋の奥に、赤香色の土蔵がありました。

その中で、細糸で織られた薄綿素材の上衣が手に触れ、形と質感それに歳月をたくわえた虫跡、人の所作が記憶された擦りきれ穴、その存在が一目で気に入りました。

私の家系が昔、養蚕家であったことから、先祖の物ではなくお手伝いに来られていた方の衣服かもしれませんが、その奥には先祖達がみていたであろう風景が、布にひそんでいるようでもありました。

持ち帰って直ぐには手をつけず、作業場所にたたまれた布々の傍に置いて、毎日どこかしらで視線が合うような日々が続きましたが、「 百 (もも)」が草案として心からわいてきた瞬間に、鋏を入れたことでこの考えが一つに繋がったように感じ、皆さまとの会話を交えての交歓から、想いを共有したいということに至りました。

私は用途として上衣と共に畑へ、散歩へ、ありとあらゆる外生活の中で身体に添わせていたいと思いましたから、虫や太陽の光から身を守るために長袖にし、ポケットの深いものを二つ備え付けました。

それに、袖の切り替えは遠州高密度有機綿の丈夫な生地を足しいれ、切り落とした半袖部分をポケットと、擦りきれ穴などに使用して、捨てる部分がありません。

大きい虫跡には、素っ気ない白に映えそうな、古藍絣の残布を用いて丹後残糸生絹糸を二本どりで厚みを加えながら縫い上げていきました。ただ虫跡をふさいだだけなことですが、それがかえって一つの模様となり、一からの頭では成し得ない、自然体の個性が醸されています。虫の歳月をかけた仕事も、美しいと心から思えた瞬間でした。

ボタンは四つのうち、三つが取れて無くなっていましたので、古市で出会った叩円真鍮のボタンを備え付けました。

袖元は叩円真鍮のボタンを使いきってしまった為、何か手立てはないかと考え、以前から留めの所作は紐で結ぶことが好みでしたから、袖元の紐をくるくる手首に巻き付けて紐々に入れ込めば、しっかり留まり良い塩梅です。

最後に、まばらな色の其々を馴染ませようと思い、地元の山から採取してきた木五倍子に木灰媒染で浸し、薄らかな白茶になりました。

このように、着想から行程を大まかにお伝え致しましたが、今展「着心」では少人数制の抽選で、ご当選された方々のみを対象とさせていただき「百 ( もも )」を行います。

ご予約などは一切必要ありませんので、当日、想いの衣服をご持参頂いて、私と十分~二十分程度会話をかさね、衣服の行方をきめつつ、後日手を入れた衣服をお届けする形となります。

呼称については、「リメイク」だと素っ気のない響きということもあって、百と書いて、「もも」と呼びたいだけのことです。

ただ、後付けるとすると全文に記したように、心に沁みとおるほどの交歓を体現して、手をつかう行為がどこか素っ気なのないことではないなぁという所でしょうか。

日本人としての言葉をめっぽう贔屓して、たのしみたいのです。




さて、私達の物への愛情というものは歳月を経て、年々ましています。年の若い方々も、一つの物を大切にして暮らすということが流行の傍らで、抗うことよりも優しい存在で確かな動きとして在ることを私は感じとっています。私の衣服を手にして下さる方々は少なからず、もう「足りている」ということを気づいておられる生活者だと思います。

それだけに、選びとる物には深いまなざしで、注意深く心の芯でお決めになって暮らしに取り入れておられるはずです。

ゆわばそのようなこころざしの方々に、今在る衣服がふたたび長年の愛と共に光を放ち、「今」の身と心にそう遠くない、むしろ今だから生まれえた衣服となって、また歩みはじめるといった、これは衣との関わり方としての、一つの提案なのです。

私達としても、新たに作る衣服だけではない表現、本当の意味で消費する社会だけではない、現世世界区域外の、手と心をもちいた体現を地球へ讃えこみ、まっとうしたい。今できることを、誠心誠意、心地のよいそくどで。

のっぺり長らくなってしまいましたが、

皆さまの愛らしい暮らしに、お役立て頂けるのであればそれほどに嬉しいことはありません。

是非、ご活用下さい。



i a i / 居相

とうめい

とうめいは、 信州佐久、満月をあらわす名をもつ里に きまぐれにあらわれる空間です。