exhibition〈 一語一衣 〉第 3 話
第 3 話
夜という名の街
「ランプ」「ユーリ」
{ 衣 } 絹月水彫星師長衣
“ 夜という名の街はいつも真っ暗で、彫星師《ちょうせいし》と呼ばれる職人の手で空に刻み込まれた星々が、定点で気まぐれに光ったり消えたりしているけれど、まともな明かりになどならない。”
(「夜という名の街」より )
“ ゆいいつ輝きつづける月はとても高いところに住んでいる生き物で、アニが聞いた言い伝えでは、大昔に月が空で転んで地上へ落ちてしまったときに、月の光が街中を明るく照らしすぎてしまい、街に暮らす人々からひんしゅくを買ってしまったので、月は今、大ペリカンのドーの監視下のもと、ドーのくちばしにつるされて浮かんでいるらしい。”
(「夜という名の街」より )
“「この街が夜だからオレはいつも眠たいし、いつまでも眠っていられるんだ。朝と夜がある街に住んでいた頃は眠たいのに朝から晩まで仕事をしなければならなかったし、たまに外に出るとすごくまぶしいし。オレみたいにいつも暗い工房にいるヤツにはいつだって夜の方が心地いいんだ。ところで、今夜はなんの用だい?」”
(「夜という名の街」より )
「キミは月が生きているのを知っているよね?」
「うん」
「それじゃあ、月と話せばいいじゃない」
「どうやって?」
(「夜という名の街」より )
i a i
{ 衣 }
絹月水彫星師長衣
〈 染 〉
合歓木
〈 素材 〉
絹 / 民族真鍮金具
〈 寸法 〉
身丈 (前身頃) 105㎝ (後身頃) 121㎝ / 身幅 68㎝ / 袖丈 51㎝
〈 モデル身長 〉
約154 cm
〈 i a i より 〉
京都丹後半島で機織られた絹布は、
丹後ちりめんという名で有名ではあるけれど
僕は光沢が感じられるサテンのような
するっと身体を撫でるあの絹感 ( 生糸 )、
そして素朴な屑繭 ( 絹紡紬糸 )の質感が好みで
それらを自ら足を運んで在庫の山から
心がかよった布をつれかえる。
そういった意図は、布を新たに生産することよりも
現存する布がすでに在るという時代性、
そして光があたらない布を掬いあげることで、
衣服になった時の歓びはひとしお。
焼却前に捨てることなく自身の手を入れたいという内外の奮起が
原動力となって制作へとのめり込める。
合歓木は村に自生するものを必要分採らせていただき
水に浸透しやすくなるよう細かく刻んで一度鍋に入れ火をとおす。
そうしてあとは太陽熱のちからをかりて
絹と、合歓木液を七日間一緒に浸し染めあげた。
exhibition〈 一語一衣 〉
第 3 話
夜という名の街
「ランプ」「ユーリ」
{ 衣 } 絹月水彫星師長衣
〈 制作 〉
衣 i a i
物語 こじょうゆうや
写真 とうめい
exhibition〈 一語一衣 〉は
第 4 話へ続きます。
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